こんにちは、anfieldroadです。
みなさんのお勤めの都道府県では、教育委員会や教育センターが新しい学習指導要領に対応するための評価資料のようなものを出していますか? 私の勤めていた埼玉県では小学校版は昨年出て、中学校版はこの3月に出るようです。各自治体の資料にも興味があるので、「うちの県はいい資料出してますよー!」みたいな情報がありましたらぜひご教示くださいませ。(このメールに返信すると、anfieldroadにだけメールを送ることができます)
技能統合的な活動を評価するための枠組み
「目標」に登場するキーワードを分析するシリーズ、本日が最終回です。最後は、「聞いたり読んだりしたことについて」というフレーズを取り上げます。
上のピンクの枠の中の文言を見比べると、文末に出てくる動詞が違うだけでほぼ同じことが書かれていますね。「発信系」の目標の最終形態としては、ある意味ここが中学校の時点で求められる最後のゴールなのかも知れません。
ポイントは「聞くこと」と「読むこと」という受信系が起点になって、「話すこと」「書くこと」という発信系につなげるという技能統合的な活動であることですね。
この「技能統合的な活動」はこれまでの学習指導要領でも期待されていたものの、評価の枠組みが「外国語表現の能力」と「外国語理解の能力」という受信系と発信系で分割されていたために学習評価に組み入れるのが難しかった、という問題がありました。
今回「思考・判断・表現」という評価規準ができたことで、技能統合的な活動を評価する枠組みが整ったので、これまで以上に授業やテストに取り入れられていくのではないでしょうか。というか、しっかり指導・評価されていかないといけないと思います。
技能統合的な活動をするために教師に求められる支援
『解説』でも、2 内容(2)イに
日常的な話題や社会的な話題について,英語を聞いたり読んだりして得られた情報や表現を,選択したり抽出したりするなどして活用し,話したり書いたりして事実や自分の考え,気持ちなどを表現すること。
という項目が挙げられています。
それでは、技能統合的な活動をスムーズに進めるためには、教師はどんなことに気をつけなければならないのでしょうか?
『解説』で示されている、具体的な指導例としては、以下のようなものがあります。
聞いたり読んだりする前に教師や生徒,又は生徒同士がやり取りを行い,テーマに関連した情報を共有したり整理する
意見などを形成する段階において生徒が発話した語句を取り上げ,それを基に教師が簡単な文として言い換えて例示する
キーワードを書いたり,書いたキーワードや語句を枠や矢印を用いて図にしてつないだりするなどのメモの取り方についても指導する
複数のメモを比較させたり,よくできているメモを例示してどのような点が優れているかを話し合ったりする
テーマや話題から想起されるアイディアについてのマッピン グなどを利用し,思考や情報の整理を行う。
これらの指導に共通していることは、生徒が活動する前や後、あるいは最中に、教師にできること(やるべきこと)がたくさんある、ということです。統合的な活動がスムーズに進むためには、継続的な教師のサポートが重要だということです。
もちろん、どんなタスク(活動)を仕組むか、というタスクデザインも重要になりますが、そのへんはまた別の号で詳しく書きたいと思います。
ここからは恒例の愚痴になりますが、そんなふうに統合的な活動に取り組む生徒を指導・評価するためには、1人の教師が指導する生徒数が40人というのはさすがに無理がありますよね?
前回の指導要領改訂時には、学習内容が増える(例えば語彙数が900語→1200語)ことに伴い授業時数が週3→週4になりました。学習内容が3分の4倍になったので、時数も3分の4倍になっているんです。時数が増えれば、当然それに伴い英語教員の数も増えたわけで、結果として(十分とは言えませんが)英語教育に予算が多く割かれるようになったということはできると思います。
今回はもっと指導語彙数が増え、文法項目が増え、「学び方」「教え方」まで縛られる中で、文科省(財務省?)は英語教師のためにどんな援護射撃をしてくれたのだろう、という点は大いに疑問です。引き続き、声を挙げていかないといけないと思っています。
将来的に日本の英語科の教員数を増やしていこうと呼びかけるためには、そもそも英語科の教員免許を取得する学生の数を増やすことが重要です。現在の私は大学にて教職科目を担当していますので、自分が今の場所でできることを頑張らなければいけないな、と切実に感じています。
同時に、現場で教育実習生を受け入れていただく先生方にはご負担をおかけすることにはなるのですが、「卒業後にすぐ教員になるわけではない学生」(教員採用試験を受けない学生)が教育実習に行くことにもどうかご理解をいただきたいです。そうじゃないと(すでに地域によってはそうなりかけてますが)産休代替などで働いてくださる先生が足りなくなってしまいますから。