こんにちは、anfieldroadです。
「読むこと」の正確さについて書いた前号は、配信をご案内したTweetも広く拡散されたため、これまでの何倍もの人に読んでいただけたようです。おかげさまでメールアドレスを登録してくださっている方も250人を超えました。書く上でとても励みになります。
小学校と中学校では「書くこと」に求められる「正確さ」の種類が違う
さて、前号では「新学習指導要領では読むことの正確性が軽視されている」ということを書きましたが、実はこの目標マトリクスの中でも、「正確に」という語は1回しか登場しません。でもそれは、なぜか「書くこと」の目標アなんです。
『解説』ではこのように説明されています。(太字は筆者)
「正確に書く」とは,小学校の外国語科において,大文字と小文字の正しい書き分けや,符号の適切な使用など,「書くこと」に慣れ親しんできたことを踏まえ,文構造や文法事項を正しく用いて正しい語順で文を構成することや,伝えたいことについての情報を正確に捉え,整理したり確認したりしながら書くことを示している。
前段で小学校での指導とのつながりが書かれています。中学校の先生は、小学校での文字指導がどの程度定着をしているのか(あるいは、していないのか)を見極めて、必要な指導を施すことが重要だと思います。
ただ、小学校での「書くこと」はあくまで書き写すレベルの「筆写」のような活動がメインですので、何かを伝えるために自分で文を組み立てて書く上での正確さとは別次元の話です。ですので、それが一直線の中に並べて書かれていることに違和感があります。
また『解説』では、
文字言語においては,音声言語以上に正確さが重視されることから,特に「正確に」書くとしていることに留意する必要がある。
とも書いています。他の技能では「最初はざっくりそのうち正確に」と言っているのに、なぜ書くことだけは「最初から正確に」という方針を取るのかが謎です。こういったところから文部科学省の言語習得観が定まっていないように感じます。
そもそもの話ですが、ほんとうはたとえば各領域の目標が、アは【知識・技能】、イ・ウは【思考・判断・表現】のように整理されていれば、わかりやすかったのですが、そこまでの配慮はないようなので、指導・評価する教師のほうで、観点をしっかり設定していくしかないと思います。
「正確さ」の比重をコントロールするルーブリック案
私は今回の改訂で、かえって「書くこと」ではやたら細かいミスで減点する指導が増えてしまわないかを心配しています。そうならないように、評価の観点と連動させながら、正確さをバランス良く評価していくことが重要です。
例えば英作文を採点する際、【知識・技能】の観点であれば、ある程度正確さにウエイトが置かれていてもよいと思うのですが、【思考・判断・表現】の観点で採点するならば、細かいミスは(減点するにしても軽い扱いで)メッセージの授受や場面にあった語彙選択などを評価すればよいと思います。
具体的に私が過去に定期テストに出した英作文問題を見ながら考えてみましょう。問題は以下の通りです。
調理実習で作ったハンバーグをALTのTomに食べてもらおうと職員室に持っていったけど不在でした。机の上にハンバーグと一緒に添えるメモを英語で書きなさい。(10点)
下記のようなルーブリックを解答欄に印刷しておけば、項目ごとにマルをつけていくだけで採点が終わるのでスムーズです。
ここでは、語数とタスクの達成度にウエイトを置いた評価規準になっています。しかも正確さについては「ミスの種類」でカウントするので、「スペリングミスというミスがいくつあってもミス1種類」となり、「小さなミスのせいで、いっぱい書いたのに0点」みたいなことを防ぐことができます。
もちろん、評価したい観点によっては反対に「正確さ」を重視した設問があってもよいわけですし、もっと言えば1つの問題で3つの観点すべてを評価する必要もありません。
学習指導要領が変わりますが、中の細かい文言にあまりとらわれずに、教師が評価計画を丁寧に考えて、指導・評価していけばよいのだと思います。学習指導要領が変わるからと言って、教えるべき英語が変わるわけでもないですから。
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