こんにちは、anfieldroadです。
最近読者の方からメッセージをいただき、大変感激しております。ご質問もいただいているので、追々そちらにも触れながら記事を書かせていただきます。このメールにご返信いただくと発行者のanfieldroadにメッセージが送れますので、よかったらお気軽にご利用ください。
[やり取り]と[発表]の棲み分け
さて、本日のキーワードは「即興」です。
今回の改訂で「即興」という言葉が取り入れられた背景について、『学習指導要領解説』の「外国語科改訂の趣旨」には、以下のように書かれています。
授業では依然として,文法・語彙等の知識がどれだけ身に付いたかという点に重点が置かれ,外国語によるコミュニケーション能力の育成を意識した取組,特に「話すこと」及び「書くこと」などの言語活動が適切に行われていないことや「やり取り」・「即興性」を意識した言語活動が十分ではないこと,読んだことについて意見を述べ合うなど,複数の領域を統合した言語活動が十分に行われていないことなどの課題がある。(太字は筆者)
これを受けて「話すこと」が[やり取り]と[発表]に分けられたのだと思います。
私はこれまで下図のように、話す前の準備のあり/なしと活動単位(1対多 /2人以上)で分類して、[やり取り]と[発表]を区別してきました。
これがすっきりしていて個人的には気に入っていたのですが、今回Newsletterを書くにあたり、もう一度細かく読み直してみると、なんと「即興」という言葉は[発表]の目標にも登場しているんです。
これはどういうことでしょうか?
『解説』では、以下のように説明されています。
小学校では「伝えようとする内容を整理した上で」話すのに対して,中学校では,「即興で」話すことができるようになることが求められる。したがって,事前に原稿を書いてそれを暗唱したりするのではなく,興味・関心のある事柄であれば,既習の知識や技能を生かしてその場で話せるようにする必要がある。(太字は筆者)
なるほど、ポイントは「小学校との差別化」と前号でも取り上げた「関心のある事柄」であれば、という条件ということになります。
「即興」は「簡単なこと」?
いずれにしても、これがアイウの3つの目標の中で一番ハードルの低いはずのアに位置づけられているというのが不思議ですよね。だって「即興でまとまった英語を話す」ってそれなりにハードルの高いことじゃないですか?
どうも、文科省は「即興」という言葉を軽く考えているというか、意図的に「即興だからブロークンでいい」「準備なしでいいから気軽に授業に取り入れるもの」「話す活動の入口に設定しよう」というメッセージを発信しようとしている節があります。
だから、[発表]の目標イ・ウには「即興」という文言が含まれていないんだと思います。(もっというと、[やり取り」の目標イ・ウにも「即興」の文字はありません!)
『解説』では、
さらに,メモやキーワードを頼りにしながらであっても即興で発表すれば,多少の誤りやたどたどしさがあるのは当然であるという認識の下に,生徒が主体的に英語でコミュニケーションを図ろうとする態度を養う必要がある。(太字は筆者)
という言語教育に関する文科省の「認識」が語られていますが、ここは読者のみなさんにもいろいろなご意見があろうかと思います。
私も「即興性」を求める活動は授業に取り入れられるべきだと思いますが、「継続的であること」と「並行して即興の中でも正確さを高めていくための取り組みがなされること」が重要だと思っています。
その意味では、上にあるように「メモやキーワードを頼りにしながら」話すような活動を、ただ好きなことを語るフリートークで使うだけでなく、教科書本文のリプロダクションのような「ある程度の模範解答が存在する活動」と組み合わせて、正確性も意識させる場面を設定するべきだと思います。
「正確さ」と「流暢さ」はどちらも大切だと思います。ちょっと世の中が「流暢さ」推しに傾きすぎている感じがするのが個人的には気になっています。
水曜日の夜に配信しようと思っていましたが、書き直しをしていたら遅い時間になってしまいましたので、木曜日の朝になりました。毎日忙しいですが、週の後半あと少しですのでなんとか乗り切りましょう。