こんにちは、anfieldroadです。
大修館書店『英語教育』3月号が発売になりました。今年度は連載をさせていただいているので、よかったらそちらもお読みいただけたら嬉しいです。でも本名を名乗ってないので私の素性を知らずにこのNewsletterをお読みの方には、どの連載かわからないですね…。ではヒントは一番最後に。
「関心のある事柄について」という話題設定
新しい学習指導要領で示されている英語科の「目標」は、縦糸と横糸が複雑に入り混じって織り込まれているので、そのまま項目ごとに読んでいると、その語の表している意味合いがよくわからないままです。一度布を構成している糸をほどいて、糸ごとに整理し直して、その糸の特徴を見極めていきましょう。
前号では、各目標文の先頭で掲げられている「話題」の中の、「日常的な話題」と「社会的な話題」の違いについて考えました。今日は「関心のある事柄」を読み解いていきます。
学習指導要領解説では、「関心のある事柄」という文言について、登場する3つの領域すべてにおいて、
スポーツ,音楽,映画,テレビ番組, 学校行事,休日の計画,日常の出来事など,身の回りのことで生徒が共通して関 心をもっていること
という説明が書かれています。ただし、「書くこと」に関してのみ、
これらの 事柄について,例えば自分が関心をもっていること,趣味や好き嫌い,日記や短 い説明などを書けるようになることを目標としている。
という言葉が追加的に添えられています。
今回の「解説」では「書くこと」の場合のみ、「話題」だけでなく「媒体」みたいなものを例示しています。指導のためには具体的でいいのですが、それだったら「話すこと」だって様々な状況があるように思うので、「書くこと」でだけ示されていることには違和感を感じます。同じ[やり取り]だって、授業中なのか街角なのかなど場面や相手が変わればいろいろ変わると思うし、それによって表現の方法を変えることこそが「適切さ」であり、「思考・判断・表現」なのだと思うのですけどね。
今回の学習指導要領では、こうのような「なんでこっちにはそれが存在しないんだろう?」という漏れが多いように思います。新項目を増やしすぎて教員に負荷をかけすぎないようにという配慮なのかも知れませんが、整合性が取れないような気がして気持ち悪くもあります。
表現のレベルを上げるということ
さて、「関心のある事柄」という語句が出てくるのは、話すこと[やり取り]、話すこと[発表]、書くことのそれぞれアの項目です。アが3つの中では一番基礎的な目標として位置づけられている(と思われる)ので、要するに聞き手(読み手)の関心はともかく、話し手(書き手)が関心のあることについて何かしら表現できればいい、ということなのだと思います。
その証拠に、この3つの領域についてア→イ→ウと見ていくと、話題が「関心のある事柄」→「日常的な話題」→「社会的な話題」という段階を踏むように並べられています。ただ、「関心のある事柄」と「日常的な話題」は扱う内容にほとんど差がないようにも見えるので、アのほうがハードルの低い話題だと仮定すると、イではより相手意識が求められるけど、アの段階では「言いっぱなし(書きっぱなし)でもいいから自分が「関心のある事柄」についてとにかく英語で表現すること」という、より初歩的な目標を示す意味で「関心のある事柄」という文言を使用していると考えることもできるのかも知れません。
この3段階での話題設定については、気になる点が2つあります。
1つは、自分の好きなスポーツ選手、芸能人、漫画などについてなら生徒も表現しやすいだろう、と考えてのことなのだと思いますが、必ずしもそうではないのではないか、ということです。表現したいという思いが強すぎるとブロークンで単語の羅列になりそうですし、固有名詞が多くなりそうです。また、[やり取り]を成立させるためには、本来相手が「関心のある事柄」について話したほうが話が膨らむように思います。
もう1つは、レベルが上がるからといって、話題もレベルを上げる必要はない、ということです。つまり、話題は日常的でも、レベルの高い話し方(書き方)はありますし、社会的な話題でもシンプルで話し手に負荷のかからない表現方法もあると思います。ア→イ→ウと上に行くほど、【話題】も【内容】も【言語材料】も高いものを求められるのだとするとア→→イ→→→→ウと項目間の難易度の差が相対的に大きくなってしまうように思います。これについては評価についてのちほど考える際にもルーブリックの活用なども含めて改めて触れたいと思います。
アの目標に関しては、シンプルに発話できればいい、書ければいい、[やり取り]も教員相手に成立すればいい、と考えて気楽に表現する機会を設定しよう、ということには賛成です。毎回の授業の最初に5分くらい、自由に話す機会をつくることはすぐにでもできると思います。一方で、ちょっとずつレベルを上げていきたい、という場合にはどの部分で負荷をかけるか、選択しながら表現のためのタスク(お題)を設定していけばよいのだと思います。
『英語教育』連載のほうでは、漫画も描かせていただきました。漫画家になって連載を持つのが小さい頃の夢だったので、1つ夢が叶いました。(ヒント終わり)