文章によるニュースレター再開!
このニュースレターでは今年2月からはポッドキャストを中心に配信してきました。音声のほうが細かいところまでお伝えできるというメリットを感じつつも、私自身が体調を崩したり(しかも喉だったり咳だったり!)したこともあって、コンスタントに配信ができない時期もあり大変申し訳なく思っておりました。特に有料会員である【Proプラン】の方々には、その対価に合った質と量のコンテンツを配信せねばならないと感じております。
そこで、今回から文章によるニュースレターも再開して、主に【Proプラン】の方向けに配信をしていくことにしました。これなら、声が出なくても配信できますので。とりあえず1つのテーマで「連載」していくイメージで、定期的に配信していければと思いますし、時々は【無料プラン】の皆様にも読んでいただけるものを配信する予定です。
とりあえず、「英語授業アイデアの源泉」と題して、連載をスタートしてみます。これは、いろんなところで授業の活動アイデアをご紹介するたびに、「どうしたらそんなアイデアが思い浮かぶのか?」という質問をいただくことが多く、いつかきちんとまとめてみたいと思っていたからです。自分としては、生徒を前にして必死に考えているうちに自然と思いついたものがほとんどですが、その私の中の「自然」をちゃんと言語化して、他の方が授業のアイデアを考える際のヒントになればと思っています。その意味では、私なりの「発想法」をまとめた文章になるかもしれません。
活動そのものは、書籍やインターネット上に優れたアイデアが溢れています。ただ、人のアイデアをそのまま実践するだけでなく、自分なりにアレンジしたり、独自の新しい活動が思いついたら、きっと英語の授業が(生徒にとっても先生方にとっても)さらに楽しいものになるんじゃないかな、と思います。
ということで、連載第1回はお試しということで、【無料プラン】の方も読めるように全員に向けて配信してみます。よかったら感想などお聞かせください。
英語授業アイデアの源泉
#01 人気テレビ番組を真似する
繰り返し使えるテレビ番組のフォーマット
人はどんな時に心が動くのでしょうか。その仕組みを知るためには、すでに存在している「面白いもの」に注目して、一体何が多くの人たちの心を動かしているのか、分析してみるといいと思います。テレビ番組(最近ならYouTubeの動画も!)、アナログからデジタルまで様々なゲーム、つい何度も覗いてしまうSNSなど、人が夢中になっているものはたくさんあります。
テレビ番組のいいところは、繰り返し使えるフォーマット(枠組み・テンプレート)の宝庫だということです。毎週放送するレギュラー番組の場合、面白いフォーマットが1つあれば、そのフォーマットに毎回いろいろな出演者やテーマを乗せていくことで、安定して番組を制作していくことができます。
実は、こういうフォーマットを利用するメリットは、授業を受ける生徒の側にもあります。まず、その番組自体が有名であれば、難しい説明をしなくても、「あの番組のクイズコーナーだな」と多くの生徒に伝わります。教師がやり方を英語で説明しても、十分に理解ができるでしょうし、元々やり方を知っている生徒がグループやペア内でわからない生徒をサポートしてくれると思います。
また、仮にその企画があまり知られていないものであったとしても、一度基本的なフォーマットを体験すれば、あとは毎回お題が変わるだけだな、と生徒もわかるので、見通しを持って授業に取り組むことができますし、場合によっては家庭で「対策」を練ってくれるかも知れません。そんな「主体的」な家庭学習を促すことができたら、これ以上の成果はありません。
しゃべくり006
私が中学校で実践した活動ですので最近のテレビ番組という感じでなくて申し訳ないですが、日本テレビ系列の「しゃべくり007」という2008年放送開始のトーク番組をモデルにした活動アイデアをご紹介します。そのままだとなんなので、授業では「しゃべくり006」と呼びました(6人班を使って取り組みましたし)。
この番組では、MCがゲストに話を振りながら面白おかしくリアクションをして番組を盛り上げます。つまり、MCのスキルがものすごく問われることになるんですが、MCが複数いるタイプのトーク番組であれば、グループでお互いにサポートをしながら番組を進行することができるので、生徒の習熟度に不安がある場合なども安心です。
また、実は「複数のMCでトーク番組を進行をする」ためには、かなり集中して他の人たちの発話を聞いて内容を追っていく必要があり、高度な「聞く力」を求められます(あるいは、「聞く力」を育てる機会になります)。前の人がすでにした質問を繰り返し尋ねてしまったら台無しですので、そういった流れを考えながら聞き、話す活動は、まさに「思考・判断・表現」の活動と言えるでしょう。
具体的な指導手順は以下のとおりです。
「ALTをゲストとして迎え、6人がいろいろ質問をしたりリアクションしたりすることで、楽しく会話する番組を5分間継続する」という活動の目標を伝える
グループごとにテーマを設定させ、ALTへの質問を考えさせる。原則として、そのテーマについて会話を継続するが、盛り上がらなかったときのためにもう1つ予備のテーマを設定させておく。
質問リストの中から、聞く順番や担当者を決めさせる。話の展開をシミュレーションさせておく。
ゲストが入場する番組のBGMを流し1グループ目の「収録」スタート。実際に評価や記録のためにビデオカメラを回すと盛り上がります。他のグループの人達は「観覧客」として番組を盛り上げ、楽しみます。
5分経ったら番組を終了させ、次のグループの「収録」を開始する。
生徒の反応と活動の評価
話題が途切れたら、収録中1度だけ “By the way…” と話題を変えることを許可していましたが、多くのグループが1つの話題で5分間乗り切っていました。予め、「この質問でもしNoと言われたらこう展開しよう」とシミュレーションしていた様子が伺えました。
この活動の面白いところは、impromptu(即興的)な「やり取り」でありながら、ある程度prepared(準備あり)な活動であることです。予め用意した質問リストの中から、話の流れに合わせて質問をする、という旧学習指導要領で言うところの「適切な発話」を鍛える(評価する)活動と言えるでしょう。そういう活動って、大事なのにあまりやれてなかったなと思っていたので、私としてはこの「しゃべくり006」を重宝していました。
評価については、まず活動としてはとにかく放送事故なく5分間番組が継続できれば、そのグループは「クリア」としました。全グループ収録後、一番おもしろかった番組を投票で決めても面白いですね。
より言語的な部分では、後ろで聞きながら「よい質問」が出たらFine Play!という札を挙げてました。ここでの「よい質問」とは、「ALTの答えを受けて関連する質問をすること」としました。この「よい質問」の数は、現行の評価規準で言えば〔思考・判断・表現〕の評価となるでしょう。
この流れに合った質問ってレベルが高く感じるかもしれませんが、グループにいる英語の苦手な生徒を “Anything else?”係や “For example?”係にして、英語の得意な生徒が肘打ちでタイミングを教えているグループがあったりと、それぞれ工夫をして乗り切っていました。
懐かしのテレビ番組だって参考になる
個人の趣味が多様化した最近では、「みんなが同じ番組を見ている」という状況がほとんどないかもしれません。それでも、面白いテレビ番組の仕組みは、初めて見た人でもわかりやすいものです(そういうのがいい番組なんでしょうね)。
そして、最近のテレビ番組はある趣味を持った人たち向けに寄せて作られていたりすることもあるので、むしろ先生方が昔見ていた懐かしの名番組を参考にするほうが面白いかもしれません。具体例を出すと世代がバレちゃうんですが、「ヘキサゴン」「アタック25」「マジカル頭脳パワー」などクイズ系の番組は活動として真似しやすいですし、「スマスマ」や「いいとも」「VS嵐」などのバラエティー番組でやってたゲーム的なコーナーなども、そのまま英語に置き換えてやるだけで面白くなりそうな活動がいっぱいあると思います。
「アイデアの源泉」などと看板を掲げながら、第1回から「真似する」(パクる?)なんてネタで申し訳ないんですが、むしろあまりハードルを上げずに、まずは「面白いものを真似する」「なぜ面白いかを考えてみる」あたりからスタートしてみてはいかがでしょうか、というご提案でした。
こんな感じの記事を、今後【Proプラン】の方々には月に1〜2本配信する予定です。どうぞお楽しみに。