こんにちは、anfieldroadです。
気がついたら1月ももう最終日。明日から2月だなんて信じられません。このNewsletterの1つのゴールである新中学校学習指導要領のスタートまであと2ヶ月になりました。年度末のお忙しい時期にはなりますが、皆さんがこのメールをじっくり読むお時間が取れる余裕が少しでもあると良いなと願っております。
「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」
さて前号から、中学校学習指導要領の「目標」部分を吟味しています。ちなみに、学習指導要領は「外国語科」という大括りの下に、「英語」という枠組みが設けられています。今検討しているのは、「外国語科」の目標部分です。
その中で、前回は文章の後段部分である「どういうことができるようになるか」について考えてみました。「伝え合う」という要素が新登場だ、というお話でした。今日は、前段部分に注目してみましょう。
今回の改訂のキーワードの1つである、「見方・考え方」というフレーズの登場です。「知識や技能」を「思考力・判断力・表現力等」まで高める(深める)ために欠かせないものとして、各教科の特性を考慮して設定されています。
「新しい学習指導要領の考え方」(文部科学省)より
これまでにも「見方や考え方」という言葉はいろんなところに登場していましたが、いわゆる「アクティブ・ラーニング」を意識して、改めて各教科で統一して整理したもので、「教科の枠を超えて社会人になっても役立つもの」という設定のためか、あえて教科名を外して「言葉による…」「現代社会の…」という文言に統一しているところが興味深いです。
「VIEW21教育委員会版」(ベネッセ教育研究所)より
さて、肝心の「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」を見てみると、学習指導要領解説には以下のように書かれています。
「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」とは,外国語によるコミュニケーションの中で,どのような視点で物事を捉え,どのような考え方で思考していくのかという,物事を捉える視点や考え方であり,「外国語で表現し伝え合うため,外国語やその背景にある文化を,社会や世界,他者との関わりに着目して捉え,コミュニケーションを行う目的や場面,状況等に応じて,情報を整理しながら考えなどを形成し,再構築すること」であると考えられる。
なるほど。私の印象としては、現行でいうところの「言語や文化についての知識・理解」における「文化についての理解」に近い感じもしますね。語順やディスコースの違いを見つけてその理由を想像してみたり、「コミュニケーション能力」の中のいわゆる「社会的」「適切さ」に関する部分を意識して発話させてみたりと、教師の側が授業の中で仕掛けるための拠り所になるのかな、と思います。
でも、こういうのって、これまでも面白い英語の授業をされている先生は持ち合わせている視点ですよね。そういう視点がなくて、ただ文法を順番に提示しているだけでは教える側も学ぶ側も面白くもないし、そもそも力もつかないでしょうから、至極当たり前のことが言語化されただけとも言えるかもしれません。
大学入試共通テストの功罪
一番最後の、「コミュニケーションを行う目的や場面,状況等に応じて,情報を整理しながら考えなどを形成し,再構築すること」という部分は、最近話題になった「大学入学共通テスト」の新傾向でも見て取れます。とにかく複数の資料を素早く読ませて「情報処理」をさせたい、というメッセージが伝わってきます。
この辺についてはまた今後詳しく書きますが、いわゆるTask-based Language Teaching的なタスク活動を授業に設定しようと思ったら、そういう状況設定は必須ですし、目的があればコミュニケーションにおいて自然と工夫が生まれるので、授業にはどんどん取り入れられるべきだとは思います。
でも、入学試験という文脈で受験生の英語の理解力や表現力を見たいのであれば、少なくとも全てのテスト問題に「状況」が設定される必要はないかなと思います。テストを解きながらいちいち状況を理解するのが面倒ですし、いくらコミュニケーション能力の構成要素が多様だからといって、選抜試験でその全てを測ることは必要ないからです。その意味で、この大学入学共通テストは新学習指導要領のアドバルーン的に使われた感があって、相当控えめに言って個人的にはいい気分がしません。
そもそも、「見方・考え方」そのものは評価の対象ではありません。あくまで教師が授業を工夫したり、学んだことを授業外でも有機的に繋げていける生徒を育てていくための「心がけ」みたいなものなので、どんなに立派なまともなものだったとしても、別の目的のために悪用されるのは何としても止めなければならないと思います。
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